Pythonバイブコーディング講座 — Part 2

環境構築

VSCode と仮想環境で最初のコードを実行

Part 1 で説明した環境構築を、実際に手を動かして体験します。本パートでは、VSCode と Python 本体をインストールし、解析用フォルダに仮想環境を構築します。そして最後に、サンプルのExcelファイルを読み込んで基本統計量を出力するところまで進みます。所要時間は約1時間です。エラーが出ても焦らず、画面の表示を1つずつ確認しながら進めてください。

必要なもの(すべて無料)

01 VSCodeをインストールする
Part 1 のおさらい

VSCode はコードエディタ、つまりコードを書いて実行するための専用アプリでした。色分けや入力補完のほか、コマンドを打つ「ターミナル」も同じ画面で開けます。この講座の作業は、ほぼすべて VSCode の中で完結します。

code.visualstudio.com を開き、「Download for Windows」(Macの場合は Mac)をクリックしてインストーラをダウンロードします。ダウンロードしたインストーラを実行してください。画面の指示に従って進めれば完了です。

Windowsの場合、インストール時に「PATHへの追加」「右クリックメニューに追加」などのオプションがあります。すべてチェックを入れておくと、後の作業が楽になります。

02 Python本体をインストールする

ここでインストールする「Python本体」は、Part 1 で登場したインタプリタ(実行エンジン)にあたります。書いたコードを1行ずつ解釈して実行してくれる、心臓部です。

python.org/downloads からPythonをダウンロードします。最初は最新の安定版(例:Python 3.12)でかまいません。

必ずしも「最新版」が良いとは限りません。一部のライブラリは新しいPythonバージョンにまだ対応していないことがあります。そのようなライブラリを使いたい場合は、あえて少し古いバージョン(例:Python 3.10 や 3.11)をインストールする必要があります。最初は最新版で進めて、もし「このPythonバージョンでは動かない」というエラーに遭遇したら、後から別バージョンを入れ直すことができます(手順は Part 3 で説明)。

重要:Windowsのインストール画面で 「Add python.exe to PATH」 のチェックを必ず入れてください。これを忘れるとターミナルからPythonを呼び出せなくなります。Macの場合は特に追加設定は不要です。

インストールが終わったら、念のため確認します。VSCodeを起動し、上部メニュー「ターミナル → 新しいターミナル」を開いてください。次のコマンドを入力します。

ターミナル
python --version

Python 3.12.x のように表示されれば成功です(Macの場合は python3 --version を試してください)。

03 解析用フォルダを作り、data フォルダに Excel を置く

PCの好きな場所(例:デスクトップ)に新しいフォルダを作成します。名前は my_first_analysis などわかりやすいものにしましょう。

次に、この中に data という名前のサブフォルダを作り、解析したいExcelファイル(例:sample_data.xlsx)をその data フォルダの中に置きます。手元に適当なファイルがなければ、Excelで簡単な表(例:列見出しが「身長」「体重」「年齢」の数値データ)を作って保存しましょう。

最初から生データを data フォルダに分けておくのは、Part 5 で論文と一緒に公開するときのフォルダ構成に最初から合わせておくためです。あとで作り直す手間がなくなります。

この時点でのフォルダ構成

my_first_analysis/
└── data/
    └── sample_data.xlsx

04 VSCodeでフォルダを開く

VSCodeを起動し、上部メニュー「File → Open Folder(フォルダを開く)」から先ほど作った my_first_analysis フォルダを選択します。左側に data フォルダがあり、その中に sample_data.xlsx が表示されればOKです。

「このフォルダ内のファイルの作成者を信頼しますか?」と聞かれたら「Yes, I trust the authors(はい、作成者を信頼します)」を選んでください。

05 拡張機能「Japanese Language Pack」「Python」「Jupyter」をインストール

VSCodeの左サイドバーにある四角いアイコン(拡張機能 / Extensions)をクリックします。検索ボックスで以下を順にインストールしてください。

いずれも青い「Install」ボタンを押すだけです。Japanese Language Pack をインストールすると、画面右下に「Restart(再起動)」ボタンが現れます。これを押して VSCode を再起動するとメニューが日本語になります。

Windows の方へ:拡張機能のインストール時や後の pip install 時に「path too long」「ファイル名が長すぎる」といったエラーが出る場合があります。Windowsのファイルパス長制限が原因です。対処法は 補足記事「Windowsの『ロングパス』問題への対処」 を参照してください。

06 仮想環境(venv)を作る

ここがいちばん大事なステップです。仮想環境とは、このフォルダ専用の独立したPython環境のことです。Part 1 で「プロジェクト専用の作業部屋」にたとえた、あの箱をここで実際に作ります。仮想環境を作っておけば、ライブラリのバージョンがほかのプロジェクトと干渉しません。さらに、後で再現性を保つためにも役立ちます。

補足:そもそも「ターミナル」とは

ターミナル(terminal)は、キーボードから命令(コマンド)を打ち込んで PC を文字で操作するための画面です。普段マウスでクリックして使うフォルダやファイルの操作を、文字で「これをやって」と指示する道具だと思ってください。Python のインストールや仮想環境の作成のように、画面のボタンが用意されていない操作は、ターミナルからコマンドを実行するのが標準的なやり方です。「黒い画面に文字を打つ」と聞くと身構えますが、本講座でやることは主に「決まったコマンドを1〜2行コピーして実行する」だけなので、気負わずに進めてください。

VSCodeの上部メニューから「ターミナル → 新しいターミナル」を選びます。画面下部にターミナルが開きます。

補足:ターミナルの「現在地」を確認する

ターミナルは「いまどのフォルダで作業しているか」(カレントディレクトリ)を常に持っています。VSCode から開いたターミナルは、VSCode で開いているフォルダがそのままカレントディレクトリになるため、Step 4 で my_first_analysis を開いていれば、ターミナルもそのフォルダで起動します。プロンプト直前の表示でフォルダ名を確認できるので、ここから先のコマンドはすべてこのフォルダの中で実行されます。

もし別のフォルダにいる場合は cd プロジェクトのパス で移動します(例:cd C:\Users\name\my_first_analysis)。現在地のパス全体を確認したいときは、Windows なら Get-Location、Mac / Linux なら pwd を実行してください。

ターミナル種類の選び方(Windows)

ターミナルが開くと、Windows では PowerShell・Command Prompt(コマンドプロンプト)・Git Bash など複数の種類が選べます。本講座では PowerShell を推奨 します。ターミナルの右上にある「+」ボタンの隣の「∨」プルダウンから「PowerShell」を選んでください(既定で PowerShell になっていることが多いです)。Mac/Linux の場合は zsh または bash が標準で選ばれているのでそのままでOKです。

ターミナルが準備できたら、次のコマンドを実行してください(コマンドを入力して Enter を押す)。

ターミナル(Windows / Mac 共通)
python -m venv .venv

Macで python コマンドが効かない場合は python3 -m venv .venv としてください。コマンドが完了すると、フォルダ内に .venv という新しいフォルダが自動で作られます。これが仮想環境の本体です。

Pythonバージョンを指定して仮想環境を作りたい場合:複数のバージョンのPythonをPCに入れている場合、どのバージョンの仮想環境かを指定できます。Windows なら py -3.11 -m venv .venv(Python 3.11 を使う場合)、Mac/Linux なら python3.11 -m venv .venv のように、バージョン番号を指定して実行します。指定したバージョンが事前にインストールされている必要があります。

この時点でのフォルダ構成

my_first_analysis/
├── .venv/           # 仮想環境(中身は触らなくてOK)
└── data/
    └── sample_data.xlsx

07 仮想環境に「入る」(アクティベート)

作った仮想環境を「使う」状態にします。これを 仮想環境に入る(アクティベートする)と呼びます。仮想環境に入った状態で pip install を実行すると、ライブラリはその仮想環境の中だけにインストールされます。python コマンドも、その仮想環境のPythonが使われます。逆に、入っていない状態で pip install を実行すると、PCのシステム全体にライブラリがインストールされてしまいます。これでは、プロジェクトを分離した意味がなくなってしまいます。

ターミナルで次のコマンドを実行してください。

Windows(PowerShell)
.venv\Scripts\Activate.ps1
Windows(Command Prompt)
.venv\Scripts\activate.bat
Mac / Linux
source .venv/bin/activate

成功すると、ターミナルのプロンプトの先頭に (.venv) という表示が出ます。これが「現在は仮想環境の中に入っている」ことを示す印です。逆に (.venv) の表示が消えていたら、仮想環境から出ている状態です(明示的に出るときは deactivate コマンドを実行します)。

Windows PowerShell で「このシステムではスクリプトの実行が無効になっています」というエラーが出る場合は、ターミナル上で Set-ExecutionPolicy -Scope Process -ExecutionPolicy Bypass を1回実行してから、再度 activate コマンドを試してください。

08 VSCodeに仮想環境を認識させる(Select Kernel / Python Interpreter)

VSCodeにも「どのPython環境でコードを実行するか」を教える必要があります。設定方法は2か所あります。状況によって使い分けてください。

どちらの場合も、選んだ環境がそのファイルでコードを実行する際に使われる環境になります。本講座では .ipynb を扱うので、右上の「Select Kernel」を主に使います。

選択肢に .venv が出てこない場合は、VSCodeを一度閉じて開き直してみてください。それでも出ない場合は、Step 6 の仮想環境作成が失敗している可能性があります。.venv フォルダがプロジェクト直下に存在するか確認してください。

09 notebooks フォルダに .ipynb を作る

まず、左サイドバーのフォルダ表示エリアにある「新規フォルダ」アイコンをクリックして、notebooks という名前のフォルダを作成します。次に、その notebooks フォルダを選んだ状態で「新規ファイル」アイコン(紙のマーク)をクリックし、analysis.ipynb という名前のファイルを作成します。.ipynb は Jupyter Notebook と呼ばれる形式で、コード・実行結果・説明文をセル単位で記録できる、研究や教育で広く使われている便利な形式です。

解析コードを notebooks フォルダ、生データを data フォルダと分けておくと、Part 5 で公開するときのフォルダ構成にそのまま使えます。最初からこの形で進めることで、あとで並べ替える混乱を防げます。

この時点でのフォルダ構成

my_first_analysis/
├── .venv/
├── data/
│   └── sample_data.xlsx
└── notebooks/
    └── analysis.ipynb    # 解析スクリプト

10 Hello World を実行する

作った analysis.ipynb をクリックして開きます。最初のセル(コードを書く欄)に次のコードを入力してください。実行は、左側の「▷」(再生ボタン)か Shift + Enter で行えます。

analysis.ipynb(セル1)
print("Hello, world!")

セルの下に Hello, world! と表示されれば、Pythonの実行環境が正常に動いています!おめでとうございます。

初回実行時に「Pythonカーネルを選択してください」と出たら、.venv のPythonを選びます。「ipykernel をインストールしますか?」と聞かれたら「Install」を選んでください。

11 ライブラリ(pandas)をインストール
Part 1 のおさらい

ライブラリは、誰かが作って公開してくれた「便利な機能の集まり」でした。pip install は、それをいま入っている仮想環境(箱)の中に入れるコマンドです。ここで入れる pandas は、表形式データを扱う定番のライブラリです。

Excelを読むためのライブラリ pandas と、Excel形式に対応する openpyxl を仮想環境にインストールします。ターミナル(プロンプトに (.venv) がついている状態)で次のコマンドを実行してください。

ターミナル
pip install pandas openpyxl

ダウンロードと展開が進み、最後に「Successfully installed ...」と表示されれば成功です。

ここがポイントです。今インストールしたライブラリは この仮想環境の中だけに入ります。別のプロジェクトで .venv を作った場合は、別途そこにもインストールが必要です。これによってプロジェクトごとのバージョンを独立して管理できます。

12 ライブラリを import して使う

Part 1 でも触れたとおり、インストールしただけではコード上で使えません。import 文で「これから使います」と宣言する必要があります。analysis.ipynb に新しいセルを追加(上のセルの下にある「+ Code」をクリック)して、次を実行してみてください。

analysis.ipynb(セル2)
import pandas as pd print(pd.__version__)

セルの下にバージョン番号(例:2.2.0)が表示されればOKです。import pandas as pd は「pandasライブラリを pd という短い名前で使います」という意味です。以降のコードでは pd.read_excel(...) のように pd. を頭につけて呼び出します。

13 Excelファイルを読み、基本統計量を出力

いよいよ実データを扱います。新しいセルに次のコードを入れて実行してください。sample_data.xlsx の部分は、自分のファイル名に合わせて変更します。

analysis.ipynb(セル3)
df = pd.read_excel("../data/sample_data.xlsx") df.head()
なぜ「../data/」なのか

いま開いている analysis.ipynbnotebooks フォルダの中にあります。一方、データは隣の data フォルダにあります。先頭の .. は「1つ上の階層(=プロジェクト直下の my_first_analysis)に戻る」という意味です。そこから data フォルダに入るので、パスは ../data/sample_data.xlsx になります。コードの中でファイルを指定するときは、いつも「いまのノートブックの位置から見た道順」で書くと考えてください。

Excelの先頭5行が表として表示されれば成功です。df(DataFrame)はpandasがExcelを読み込んだときに作る「表データ」のことです。

次のセルで基本統計量を出してみましょう。

analysis.ipynb(セル4)
df.describe()

各列について、件数(count)・平均(mean)・標準偏差(std)・最小値(min)・四分位(25%・50%・75%)・最大値(max)が一気に出力されます。

これでもう、あなたはPythonでデータ解析をしている状態です。Part 3 では、ここから「もっと複雑な解析をLLMにやってもらう」やり方を学びます。


このパートでできるようになったこと

次のPart 3では、このセル単位の実行スタイルを活かして、LLMにコードを書いてもらいながら解析を進めていきます。

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